熱烈な想いを一句にのせて~百人一首~

ついこの間、映画「ちはやふる」が公開され、百人一首が話題となりました。

SONY DSC百人一首とは、100人の歌人の優れた和歌を一首ずつ選んだもの。
その和歌には溢れんばかりの恋心を書きつづったものが殆どです。
昔の人が様々に作った和歌にはどんなものがあるかご存知ですか?

時代が違っても、人を思う気持ちは変わらないもの。
平和な時代を生きた平安時代の人たちは、毎日恋にあぐね、常に人を思う気持ちを持って生きていたのでしょう。

そんな、和歌の意味を知っていくと、今の私たちでも、とても共感することができます。

読むと幸せでほっこりとした気持ちになり、時に切なくなる和歌の数々の中から相手への気持ちを心から綴った恋の歌を、いくつか紹介したいと思います。

 

 

 

「かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを」

著:藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)

3

 

“あなたのことがこんなに好きなのに言えないでいます。あなたは僕の気持ちを知らないでしょう。伊吹山のさしも草のように燃えているこの想いを。”

 

この歌は、想いを寄せる相手に初めて気持ちを伝えた、今でいうラブレターのようなもの。伝えたいのに伝えられずにもどかしく思っていた気持ちをついに打ち明け、「燃える想い」を相手にぶつけるという、なかなか情熱的な想いです。しかし文面はといえば、「こんなに好きなのに言えません。」だなんてしおらしい一文になっています。“かくとだに”とは副詞で、一般的には“かく”が「このように」“だに”が「~さえ」という役割で使用されますが、ここでは「このようにあなたをお慕いしているとさえも」という意味の言葉になります。

もどかしさを書いたこの和歌を藤原実方朝臣は、果たしてどんな気持ちで送ったのでしょうか。

 

 

 

「君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな」

 著:藤原義孝(ふじわらのよしたか)

4

 

“あなたのためにはたとえ捨てても惜しくはないと思っていた命でさえ、あなたに逢った今となっては(あなたと逢うために)少しでも長くありたいと思うようになりました。”

 

愛する人のためなら、自分自身の命ですら惜しくないというおおらかでまっすぐな忠誠心。しかしいざ逢って想いが通じ合った今、次はあなたと共に末永く生きていきたいと、思うほどに清らかな想いを書いています。

しかしこの作者は21歳という若さで人生を終えてしまいます。そんな短い人生の中で、命さえも惜しいと思えるような恋をしていたのですね。

“君がため”は、君のために、という意味ではなく、ここでは「あなたと逢うために」という気持ちを表すようです。

藤原義孝は和歌を書いた相手と1日も長く一緒にいたかったことでしょう。

 

 

 

「今はただ 思い絶えなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな」

 著:左京大夫道雅(さきょうのだいふみちまさ)

2

“今となっては、あなたへの想いを諦めてしまおうと、ということだけを人づてにではなくせめて直接あなたに逢って伝える方法ががあったらよいのに。“

諦めてしまおうと思った恋。しかしせめて諦めることだけでも本人に直接伝えることがでいたらいいのに。なんとも切ない想いですよね。
実はこの歌は、作った本人の実話何だそうです。この歌が後に恋愛事件へと発展してしまい、この想いが世に知れ渡った作者は、生涯孤独のまま人生を終えます。もう叶わぬことなのに、別れの言葉さえも逢って伝えることができず、再び顔を合わせることすらできないなんて。
しかし、この和歌はいつの時代になっても永遠に人々の心に残り続けるでしょう。

 

 

 

 

~最後に~

今回は文面の節々にどこか切なさを感じるような3つの恋の歌を紹介しました。

6
聞いているこちら側が少し恥ずかしくなってしまうような熱烈な歌から、痛いほど胸を締め付けられてしまうほど。
切ない恋愛など、人の想いは十人十色。

和歌の意味を深く読み取っていなかった方でも、春うらら、ぜひ甘い一句を詠んで、愛しいあの人を思い浮かべながら感慨ふけってみるのもいいかもしれませんね。

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