神戸大学ラルフ先生 INTERVIEW

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ラルフ・ベーベンロートRalf Bebenroth,)先生
神戸大学経済経営研究所教授
ドイツ生まれの日本の経営学者。
主な研究領域はコーポレート・ガバナンスと人事管理。
現在の研究課題は日本、ドイツと欧州のコーポレート・ガバナンスシステム。
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―――本日はお忙しいところありがとうございます。ラルフ先生はドイツ生まれの経営学者だと伺いましたが、いつ頃から日本に来られたのでしょうか。

「2001年の春に日本の東京工業大学経済経営研究員に入りました。4月に文科省の博士号研究員の奨学金を頂き、それから2年間、東京工業大学で博士号研究員として会社の合併・買収についての調査をしていました。ひとつの会社が他会社を買収し統合した場合、その後どうなるのかという研究を進めながら、日本語を勉強していきました。」

―――日本語がとてもお上手で驚きました。2年間で習得したなんて驚きです。

「ありがとうございます。研究論文やメールを全て英語で行っていた事もあり、徐々に日本語の能力が落ちてしまいましたが、2年間東京に滞在し日本語を覚えるのはとても楽しかったです。日本語を勉強しているとき、大阪の日本学術振興会のプログラムに参加している、大阪経済大学の教授と友達になりました。私も大阪の日本学術振興会でもう一度 博士号研究員になり、文科省の博士号研究員だった2年間と合わせて計4年間、博士号研究員をしていました。」

 

―――そこまで密に研究されたのですね。東京から大阪、次は神戸となったのはなぜでしょうか。

「大阪の研究室にいたとき、神戸大学の先生がいらしてご紹介頂いたのです。神戸はとてもきれいな街ですね。大阪の面白さももちろんですが、神戸もなかなかに興味深いところです。2009年には、大学の方からガバメントのお誘いを頂きました。」

 

―――先生が日本にいらっしゃったキッカケは何ですか?日本で経済や経営を学ぼうと思われたのはなぜでしょうか。

「私が若いころの日本の経済やマネジメントはトレンディー構造で、周囲の誰もが尊敬し、魅力を感じていました。そのときには既に日本にとても興味がありましたし、日本語も少しですが話せました。

ドイツ人はたいていの方がフランス語やスペイン語を話すことができます。しかし日本語は本当に難しく、私にとってはチャレンジでした。

ちなみに私の友達には日本語、中国語も、タイ語、韓国語など50カ国語を話せる人がいます。

私はドイツ人にとって、日本人はとても近い存在なのではないかと感じています。考え方が似ていて、信頼できる人が多い。日本でもドイツでもそれが嬉しくて、この国が大好きだと心から思うことができます。

ドイツ人はとても真っ直ぐで、日本人は頭がいいですね。」

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―――レクラでは女性向けの雑誌を書いているのですが、先生が思う日本の女性の印象はどのようなものでしょうか。

「日本の女性の良いところは、とても優しいところですね。しかし、よく知っていくと優しいだけでなく力強さや、リーダーシップなどを感じます。

一方、社会で働いているドイツ人女性は仕事において、常にライバルと競争心に燃えて高めあっています。“給料をどのくらいもらおう、私はこれできる!あなたはどう?”と働くことに対して意識が高い方がほとんどです。 ドイツ人の女性はとても賢いので、男性にアドバイスやアイデアを提案してくれます。」

 

―――女性だからというような格差がないのですね。ドイツの女性は頼りがいのあるパワフルな方が多いのですね。家庭の面での違いはありますか。

「日本でいう養育費を、別れた後も男性はしっかりと払い続け、女性は仕事もしながら子どもと良い生活ができる。お金に不自由することがないので離婚につながってしまう、とてもシビアです。

日本人はすぐには離婚に発展しないイメージがあります。」

―――先生の奥様は日本人とお伺いしましたが、日本人の奥様はどういった印象がありますか。

「日本人の女性はとても優しいですよね。しかし、よく知っていくと優しいだけでなく力強さや、リーダーシップなどを感じます。

奥さんとは14年前に東京で出会いました。とても完璧な母親です。家事も料理もパーフェクトで、奥さんは家で仕事をしながら、家事もこなしてくれています。

―――日本では、子どもを預けて仕事に行かれる女性も多いです。ドイツにはあって日本にはない、女性をサポートしている制度はありますか?

「たくさんあります。子どもを産む前や産後にも休みがありますが、働いているときと同じくらいのお給料が入ります。また、女性と同じように男性にもこの制度があるのです。

一度退職すると正社員復帰は難しい。正社員の人が半年ブレイクした後、パートやアルバイトになることは信じられないです。ドイツでは労働組合がすごく強いです。

パワーがあるのは、車産業などの産業労働組合です。他の会社は実はそんなにパワーがありません。ドイツの会社の平均的な休みは毎年30日間、残業すればお給料が弾みます。ドイツでは休みを取らないと労働組合から連絡が入り、休みを取るように指示が出ます。指示が出た期間は、必ず休まなければいけません。かなり厳しいチェックが入ります。」

―――日本では周りの方への遠慮で、どうしても休みを取り辛く感じてしまうことがありますが、労働組合から休みなさいと言われれば安心して休めますね。

「風邪を引いたらもちろん、仕事は終わりにして帰宅。ドイツでは、仕事と休みのバランスをとても大切にしています。

日本でも政府からの援助がありますが、ドイツでは地域によって援助がさらに増える場合もあります。そのため、ドイツは働いている方にとってはとても住みやすい環境だと思います。

しかし、例えば普通の従業員が25万円のお給料をもらっている場合、そのうち11万円~14万円は保険や税金に納めています。実はドイツでは、多く働く人ほど、たくさんのお金を払っているのです。その点では、頑張っている方がたくさんお給料をもらえる日本のシステムの方が、フェアですよね。

ドイツでは、社会福祉などがとても充実していることから、実は仕事を持たないことがベストなのです。最近は少し厳しくなりましたが、ドイツの社会福祉を受けている方はまだとても元気ですよ。この社会福祉を受けたくて来ている他国の方もいます。特に東トルコからは、子どもの教育のために、たくさんの方々がドイツに来ています。西トルコのイスタンブールに比べ東トルコはとても貧乏で、教育もなくドイツ語も話せないけれど、社会福祉を受けるためにドイツに来ます。日本へも、介護福祉を受けたい中国人やタイ人が来ますよね。それと同じかな。」

03―――同じトルコなのに、東と西でそんなに大きく違うなんて。本当はみんな自分の生まれた国で働いたり、教育を受けたりしたいですよね。

「そう思います。それから、ドイツは女性にも可能性があると思います。女性であろうと男性であろうと、待遇に大きな違いはありません。」

―――男女差別がないというのは働きやすいですね。どうしても女性はまだ進出しにくい傾向が残っていて、取締役や役職に就いている女性は少ないです。

そこで少し思ったのですが、日本でも社会保障の面でドイツと同じ制度にした場合、どうなるのでしょうか。

例えば先程のお話のように、給与の総額を25万円として、14万円を年金として国に納め、最終的に自分がもらうことができる額は11万円。日本でもこの制度が適用されたら、どのような結果になるとラルフ先生はお考えになりますか?

「日本がドイツと同じことをするのは難しいところですね。税金8パーセント、消費税8パーセント。5パーセントから8パーセントになったことい、すごく影響があった。女性だけじゃなく、男性も買い物をしませんでした。すごく経済ショック。ドイツの消費税どのくらいか知っていますか?びっくりだけど、実は19パーセント。」

―――消費税19%ですか。驚くような消費税ですね。消費税のメリット、デメリットは日本とドイツだと違いはあるのでしょうか。

「ドイツでは消費税は実は高くなったほうがいいのです。消費税が高くなれば、国からの援助費用などが、たくさん入っていきます。

ドイツの大学はどのくらい費用がかかるか知っていますか?2~3年前までは、ほぼかかりませんでした。今は学費がかかりますが、その代わりに10万円分ほどのバス定期がもらえます。その定期で生徒さんはどこへでもいけます。日本の定期は、区域を指定するシステムですよね

ドイツの定期がどこでも使用できるのは、メリットがあります。定期で色々な地域を訪れ、街の物産品や商品を購入することにより、費用が社会や国に返ってくるというシステムです。

―――とても魅力的な制度ですね。他にも日本と違う国の制度はありますか。

就業規則が全く違いますね。ドイツは17時になると、上司・部下関係なく皆、帰宅します。部長や仕事が残っている方は残業をしますが、仕事が終わったら私たちは帰ります。就業時間でみんなが帰れれば、また次の日もみんなで仕事を頑張ろう、と思えます。」

ドイツの人たちは、スローライフです。どんなことでも、じっくり一から十まで全て行います。ですので、ストレスは非常に少ないです。ネクタイしていたら保険関係者か怪しい人だと思われますし、走っている人がいたら泥棒や怪しい人だと勘違いしてしまうほどです。

―――それぞれの国の文化の違いはたくさんあるのですね。いろいろな国の良い部分を日本でも取り入れていけたら素敵です。最後に、女性しかできないと思う役割はなんでしょうか。

会社には、女性が必要だと思います。男性は男性のよいところ、女性には女性のよいところがあります。言葉遣いや気配りなど細やかな部分は女性のほうが勝っていると思います。

フランスのワインセラー知っていますか?女性の方のほうがとても鼻が良いのです。

昔、ヨーロッパでもドイツでもフランスでもワインのテイスティングは男性の仕事でしたが、女性の細やかさや繊細さを認めはじめ、女性も仕事を与えてもらえるようになりました。

今はソムリエも女性の方が多くなってきていますしね。文化が良い方向に変わっていくことはとても素敵ですね。

―――ありがとうございました。

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